スーパーの業務改善入門
2024年07月31日
赤字から簡単・確実に『黒字に転換する』ためのアプローチ
業績低迷で苦しんでいる中小のスーパーマーケットが日本全国に少なくないと思います。
今回は、赤字(低収益)から黒字に転換するための具体的なアプローチについて、いくつかの提案をさせていただきます。
以下は、私が業務改善コンサルタントとして行っている基本的なものですが、各店舗の状況に応じてカスタマイズしていただくと確実に成果を出すことが出来るでしょう。
1. 現状分析
- 財務分析: 売上、コスト、利益の詳細な分析を行い、どこに問題があるかを特定します。特に在庫回転率、粗利益率、人件費、その他の運営コストを細かくチェックします。
- 顧客分析: 顧客のニーズと購買パターンを把握します。アンケートやPOSデータの分析を通じて、ターゲット顧客層の特定とそのニーズを明確にします。
2. コスト削減
- 在庫管理: 過剰在庫の削減と適正在庫の維持を徹底します。売れ筋商品と不良在庫を見極め、仕入れの最適化を図ります。
- 人件費の最適化: 労働効率を上げるためにシフト管理の見直しや、従業員の多能工化を進めます。
- 運営コストの削減: 人件費、電気代、広告宣伝費、固定資産税、地代家賃から包装費の使用など見直し、あらゆる無駄を削減します。
3. 売上向上
- マーケティングとプロモーション: 地域密着型のプロモーションを強化します。例えば、上位顧客(ロイヤルティ)プログラムや地元イベントの開催などを通じて、顧客のリピート率を高めます。
- 商品ラインナップの見直し: 顧客ニーズに合った商品を揃えるために、商品構成を見直します。特に地域の特色を活かした商品や、オリジナルブランド商品の導入を検討します。
- デジタル化の推進: オンライン注文や宅配サービスの導入など、デジタルチャネルを活用して新たな収益源を開拓します。
4. サービス向上
- 顧客サービスの強化: 顧客満足度を向上させるために、従業員の接客スキル向上や、店舗の清潔感の維持に努めます。
- 店舗環境の改善: 店舗のレイアウトや照明、商品陳列を見直し、買い物のしやすさを向上させます。
5. パートナーシップとコミュニティ
- 地元企業との提携: 地元の農家や生産者との提携を強化し、新鮮で品質の高い商品を提供することで差別化を図ります。
- コミュニティとの連携: 地域社会との連携を深め、地元住民の支持を得るための取り組みを行います。 地域貢献活動やCSR活動を通じて、地域に根ざした存在となることを目指します。
これらの施策をバランス良く実施し、店舗の状況に応じて調整しながら進めることで、半年から1年程度での黒字化を目指すことができます。 具体的なアクションプランを作成し、定期的に進捗をチェックすることも重要です。
上記課題の中から、売上向上に関する具体的かつ効果的な実行事例をいくつか解説します。これらの事例は店舗の状況や地域特性に応じてカスタマイズしていきます。
1. 商品ラインナップの最適化
- ローカル食品の導入: 地元農家や生産者との連携を強化し、新鮮な地元産の食品を販売します。例えば、地元産の野菜、果物、乳製品などを取り扱い、「地元の味」としてアピールします。
- 事例: 地元の特産品フェアを開催し、普段取り扱っていない地元産の食品を期間限定で販売することで、新たな顧客層を獲得。
2. プライベートブランド商品の開発
- オリジナル商品: 高品質かつ競争力のある価格のプライベートブランド商品を開発します。特に日常的に使用する商品(食品、日用品など)をターゲットにします。
- 事例: プライベートブランドのオーガニック食品ラインを導入し、健康志向の顧客を引き付ける。
3. デジタルマーケティングの強化
- SNS活用: Facebook、Instagram、Twitter、LINEなど、SNSを活用してプロモーションや新商品情報を発信します。フォロワー限定のクーポンやキャンペーンを提供することで、顧客のリピートを促進します。
- 事例: Instagramで「料理コンテスト」を開催し、優勝者にはスーパーマーケットのギフトカードをプレゼント。これによりSNSでの拡散を図り、新たな顧客を誘導。
4. 顧客ロイヤルティプログラムの導入
- ポイントカードシステム: 顧客が購入ごとにポイントを貯めることができるロイヤルティプログラムを導入します。一定ポイント達成で特典や割引を提供することで、リピート購入を促進します。
- 事例: ポイント3倍デーを設定し、特定の曜日に来店する顧客を増やすことで売上を向上。
5. イベントの開催
- 店内イベント: 店内での料理教室、試食会、子供向けイベントなどを定期的に開催し、顧客との交流を深めます。イベントを通じて新商品やオススメ商品をアピールします。
- 事例: 季節ごとの試食イベント(夏はアイスクリームフェア、秋はパンプキンフェアなど)を開催し、季節商品への関心を高める。
6. 店舗レイアウトの見直し
- 客動線の改善: 店舗内の顧客動線を見直し、買い物のしやすさを向上させます。 特に、売れ筋商品やプロモーション商品を目立つ位置(マグネット)に配置します。
- 事例: レジ前に衝動購買・商品(小型のスナック菓子、飲料、雑貨など)を配置し、購入点数を増やす。
7. オンラインショッピングとデリバリーサービスの導入
- ECサイト運営: オンラインでの注文とデリバリーサービスを開始し、店舗に来られない顧客にもアプローチします。
- 事例: 週末限定のデリバリー無料キャンペーンを実施し、オンライン注文を促進。
8. コミュニティとの連携
- 地域イベントへの参加: 地元のイベントやフェスティバルに積極的に参加し、スーパーマーケットの認知度を向上させます。
- 事例: 地元の運動会のスポンサーとなり、参加者に特別割引クーポンを配布する。
これらの実行事例を組み合わせて実施し、定期的に効果を検証(定量、定性)しながら改善を図ることで、売上(来店客数)の向上を目指すことができます。
次に、コスト削減に関する具体的かつ効果的な実行事例をいくつか挙げます。これらの事例はスーパーマーケットの規模や状況に応じてカスタマイズしていきます。
1. 在庫管理の最適化
- 自動発注システムの導入: 売上データをもとに在庫を自動的に発注するシステムを導入することで、過剰在庫や欠品を防ぎます。
- 事例: POSデータを分析し、売れ筋商品と季節商品を自動的に補充するシステムを導入。これにより欠品や過剰在庫の修正の在庫管理や計画業務などの時間をふやす。
- 定期的な在庫棚卸し: 在庫の棚卸しを定期的に行い、在庫の現状を数字と現物で把握します。これにより、不良在庫や廃棄ロスを減らします。
- 事例: 月1回の棚卸しを実施し、滞留在庫の早期発見と適正な在庫コントロールを実施。
2. 労働コストの削減
- シフト管理の最適化: 労働需要に応じたシフト管理を行い、ピーク時に必要な人員を配置し、閑散時には人員を減らします。
- 事例: 来客データをもとにピークタイムと閑散タイムを分析し、シフトを最適化。これにより、必要最小限の人員で運営が可能に。
- 多能工化の推進: 教育訓練によって、従業員を多能工化し、複数の業務をこなせるようにすることで、人員配置の柔軟性を高めます。
- 事例: 従業員に対して交差訓練を実施し、レジ打ち、品出し、接客など複数の業務を担当できるようにする。
3. エネルギーコストの削減
- 省エネ設備の導入: LED照明や省エネ冷蔵庫など、省エネ設備を導入することで電力消費を削減します。
- 事例: 店内の全照明をLEDに切り替え、冷蔵設備の効率化を図ることで、年間の電力コストを大幅に削減。
- エネルギー管理システムの導入: 店舗のエネルギー使用状況をリアルタイムで監視し、無駄なエネルギー消費を削減します。
- 事例: エネルギー管理システムを導入し、電力ピーク時の使用量を抑えることで電気料金を削減。
4. 物流コストの削減
- 共同配送の活用: 他の小売業者と共同で配送を行い、物流コストを分担することでコストを削減します。
- 事例: 近隣の小規模スーパーと共同で仕入れと配送を行い、物流コストを半減。
- 配送ルートの最適化: 配送ルートを見直し、最短距離で効率的に配送を行うことで、燃料費や人件費を削減します。
- 事例: 配送ルートの最適化ソフトを導入し、配送効率を向上させることで、配送にかかる時間と燃料費を削減。
5. 運営コストの削減
- サプライチェーンの見直し: 仕入れ先を見直し、よりコストパフォーマンスの高いサプライヤーと契約することでコストを削減します。
- 事例: 複数の仕入れ先と交渉し、より良い条件で契約を更新することで仕入れコストを削減。
- アウトソーシングの活用: コア業務以外の業務(商品加工、清掃、警備、ITサポートなど)をアウトソーシングし、店内作業工数を減らしコストを削減します。
- 事例: 清掃業務を専門業者にアウトソーシングし、従業員の人件費を削減。
6. 廃棄ロスの削減
- 食品ロス削減プログラムの導入: 賞味期限が近い商品を割引価格で販売するなど、食品ロスを減らす取り組みを行います。
- 事例: 賞味期限が近い商品を集めた「見切りコーナー」を設置し、割引販売。 これにより廃棄コストを削減。
- フードバンクとの提携: 賞味期限が近いがまだ食べられる食品をフードバンクに寄付することで、廃棄コストを削減します。
- 事例: 地元のフードバンクと提携し、余剰食品を寄付することで廃棄コストを削減し、地域貢献も果たす。
7.その他のコスト削減
- 地代家賃の契約変更:多くの実績を持つ信用できる専門化に依頼して家賃交渉を行う。
- 固定資産税の還付:専門化の協力を得て、一つ一つの対象科目に対して検証を行い適正値を割り出す。
これらの事例を組み合わせて実施し、定期的に効果を検証しながら改善を図ることで、確実にコスト削減を達成でると思います。
以上、営業利益を確実に向上させるための課題について解説しました。おそらく、多くの中小スーパーマーケット企業で、「実行できる課題」が発見できたのではないでしょえうか。
目先の売上を追いかけていれば「何とかなった」時代は、とっくに昔に終わっています。実行できる課題を発見し、スピードをもって改善課題を解決することが重要です。
そして、そこから生まれた利益を、従業員教育や効率UPのための設備の導入など、戦略投資を行うことが次の成長のためには、とても重要なことです。