スーパーの業務改善入門
2024年08月19日
3年連続赤字のスーパーが、1年で急回復‼ 1000万円以上の黒字化を実現した『たった2つの方法』
今回は、私のクライアントの直近の事例を紹介したいと思います。
3年間、大幅な赤字が続いて債務超過に陥っていた地方の小さな会社が、1年で1000万円以上の営業利益を出してくれました。前年対比の増益額は数千万円に上ります。
この事例を聞くと、血の出るような痛みを伴ったコストカットのような大改革をやったのでは・・・。と、思われる方も多いのではないかと思います。
しかし、全くそういうことではありません。
そういうことをしたところで、短期的には黒字化するかもしれませんが、中長期で見たら戦力も低下してしまい、長続きする話ではありません。場合によっては会社自体の存続が危うくなってしまうことも十分考えられます。
遣ったことは、至ってシンプルで簡単な行動です。
■基本中の基本を「ただ実行してもらった」だけ
今回の改善方法は至ってシンプルで、「基本中の基本」をただ実行してもらっただけです。
しかし現在、全国に多く存在する、経営不振の中小零細のスーパーマーケット(SM)のその多くは、その「基本を知らない」のです。
また、知っていても「実行してない」という企業がほとんどだと私は思っています。
もちろん、凄まじい競争の中で必死に経営している中小スーパーもあります。
しかし、その「問題の解決策は、外部要因ではなく、内部的な課題を改善するだけで、営業利益を大幅に拡大できる」場合が少なくないのです。
今回の記事は、そのような事例とご理解ください。
ちなみに、私のコンサルティングでクライアントに伝えていることは、作業を「簡単に楽に早くする」というキーワードです。
朝から晩までしんどい思いをして、休みも少なく、低賃金で働くようなことを続けていても、誰もやる気で仕事をしてくれる人なんかいません。
そのこと自体が、生産性を低下させ、売上と利益も確実に低下する方向に向かいます。
■営業利益を大幅に拡大した、その1の方法【粗利益の改善】
今回行った改善点は、大きく二つです。
一つ目は、粗利益率の改善です。
粗利益の改善に対して、多くの企業で問題を抱えていることも少なくないと思います。今回の事例の会社は、たった3ヶ月間程度で生鮮4部門の荒利益が、その全てにおいて大幅に改善しました。
営業利益の拡大は、値入を高めることと、ロスを減らすことになるのです。
しかし、もう一つ重要なことがあります。
それは、「粗利益率はこんなものだ」と思い込んでいることです。
ほとんど何の根拠もないのに、です。
今までの経験や勘で決めているのです。規模が同じくらいの会社と比べて「他所と同じくらいとれている」と、変に安心しているのです。
また、よくある質問の中で「業界的にはどれくらいの粗利益ですかね?」と聞いてくる経営幹部もまた多くいます。
しかし、この「業界標準」というのが全く当てにならないのです。
なぜならば、ある程度大きな企業に絞られた数値のその平均値であること。
そして、それ自体会社によって振れ幅が大きく違う。
当然、会社の戦略によっても違うし、強みや弱みによっても違ってくる。
これを平均値で出して、それを参考にすることが、何かの役に立つでしょうか・・・?
私は、全くとは言いませんが、ほぼほぼ役に立たないと思っています。
なぜなら、立地も違えば、競合状況も違います。
また、現場では、高く売れば「売れないのではないか・・・」と思い込みです。
また、売上を伸ばさなくてはいけないので、多少粗利予算を下げてでも売上を取りに行く。
「売上が上がればなんとかなる・・・」と考えている経営者も少なくありません。
ところが、実際には、その思い込みによって、本来取れるべき数字(粗利益)が取れない企業が、とても多いことに気づきます。
■頭の中を『利益を取る』目的に切り替える
予算(粗利益率)でいつもより高い設定をして、それが達成できない場合、すぐ諦めて元に戻す。このパターンの会社はとても多いのではないかと思います。
そして、基本的な話で値入れの話にしても、売価設定自体が「これでないと売れないではない」と考えてしまっている。
そこには実践的マーケティングの知識もなければ、実践もない。
高くても物は売れるし、お客さんに納得して買っていただけます。
その仕組みを作ることがマーケティングです。
NB商品などのコモディティー商品は別として、生鮮品や和日配品など、勝手に売る側の思い込みによって、ただただ安売りをしているのではあまりにも勿体ないと思います。
お客様に「価値を伝える」「買う人の背中を押す」など、マーケティングの知識の習得と実践活動の努力で、適正売価での販売を考えるのです。
■営業利益を大幅に拡大した、その2の方法【部門別損益管理】
二つ目は、部門別損益管理です。
店別部門別の損益計算書を作成して、現状の営業実績のカルテを作って改善課題を明確にするのです。
損益計算書ですが、店別・部門別損益を出して管理運営しているSMは、本当に少ないと思います。
中、小零細SMに至っては、ほぼほぼやってない会社が多いと感じます。
たまに「遣っている」という会社がありますが、戦略的に活用されていません。
店舗全体で粗利益が低い高いと言ったところで、
「どこに原因があるのか」、
「どこを直せばいいのか」、
「どこを優先すればいいのか」、
ということが基本的に分からないのです。
分からないということは、憶測で改善行動を行うことになります。
的外れな無駄な計画を立てることにもなります。
その成功の確率は限りなく低くなれます。
それを毎年毎年繰り返してしまうのです。
結果的に、ムダな行動は、時間とお金をムダに使ってしまうことになります。
これでは、正しい経営はできませんし、業績は上向くことは望めません。
必要なことは、実績値を正しく読み込むこと、そして達成可能な予算を立てることを合わせて考えることで、ムダの少ない改善行動が取れることになります。
今回の事例の場合、グロッサリー部門の営業損益に大きな問題があり、粗利益率が極端に低く、大きな赤字に陥っていました。現在、品揃えを見直し、ゾーニングや品揃え、棚割の改善を進行中です。
各部門の実績と、改善すべきポイントに対して優先順位をつけて改善を行った。これがこの会社の行った活動です。
■競合を考える前に、自店をお客様目線で見直す
最初に申し上げたように、この会社の改善課題は大きく二つ。それを行っただけで、競合店対策や売上を上げるためのマーケティングの大きな仕掛けを実行したわけでもありません。
よく言う「敵は内にあり」と言う典型的な話です。
でもこのことは、全国の中小零細のSMで多く見られることでもあるでしょう。
3年間も毎年毎年大きな赤字を出し続け、最初に損益計算書を見て、私ははっきり言って冷や汗をかくほど愕然としました。
正直、「本当に改善できるだろうか」と思いました。
しかし、確実に現場は実行してくれて結果を出すことができたのです。
■正しく行動すれば、どこの会社にもチャンスはある
今回、私がこの事例を紹介したのも、中小零細のSMも、正しい行動を起こせば、短期間に大きな成果を出すことができるということ。
そして、諦めムードでやっていた会社の運営が、180度大きく転換できることを理解してほしいと思ったからです。
今回の会社においては、店内照明の取り替えなど、今までやりたくても出来なかった設備投資を実行することが出来るようになって来ています。
何と言っても、経営者と現場で働くメンバーも明るく仕事に取り組んでもらっています。
これから、マーケティング戦略に軸足を移し、地域のお客様にさらに喜んでいただけるように地域一番店を目指して頑張ってもらいます。
やっと、スタートラインに立てたのです。
これからは、「実践的マーケティングの実験を繰り返す」という、楽しい仕事をやってもらいます。