スーパーの業務改善入門

2025年05月10日

マンネリのベテラン社員が「覚醒」する瞬間

~結果を出せないチーフが変わった理由~

先日、クライアントのスーパーマーケットに、業務改善の担当部長と青果部門のバイヤーとともに訪問しました。

車中で、訪問先の店舗状況についてバイヤーにヒアリングしたところ、次のような話がありました。

  • 「売上が伸び悩んでいる」
  • 「在庫は少ないけど、売上が取れていない」
  • 「粗利を取るために守りの売場になっている」

店舗に到着して売場を見渡すと、私は、すぐに違和感を覚えました。

  • 「売れる売場になっていない」
  • 「季節感がない」
  • 「何を売りたいのか、まったく伝わってこない」

売るべき商品が、売れていない

本来、売り込みたい商品は平台のエンド、いわゆる「マグネット売場」に展開するのが基本です。ですが、そのコーナーには売上下位の商品や、旬を過ぎた商品が並んでいました。

視認性が高く、集客効果の高い場所に、売れる商品を置かない。これでは当然、売場効率も下がってしまいます。

そもそも、

  • 今売りたい商品(商品ライフサイクル上の注力商品)
  • 季節の主力商品(来店客に響く定番品)
  • 政策的に打ち出す必要のある商品

といった【売場の優先順位】が、まったく整理されていないのです。

固定観念が「売れない原因」になる

私は青果チーフにこうした問題点を伝えましたが、返ってきた言葉は、

「うちの店は高齢者が多いので、柑橘類がよく売れるんです」

というものでした。一見もっともらしい説明ですが、聞けば聞くほど、実態とズレている感覚が強まりました。

その場で、私はバイヤーに「この店の野菜と果物のベストレポート(販売実績表)」を出してもらいました。

結果は――
チーフが「売れている」と思い込んでいた商品と、実際によく売れている商品はまったく違っていたのです。

経験が邪魔をする瞬間

長年の経験があると、「昔はこうだった」「この商品はうちでは鉄板」といった【固定観念=バイアス】が無意識に染み付いています。

しかし、時代は変化しています。
気候も変われば、商圏人口や構成も変わります。当然「売れる商品」「売れるタイミング」も変化します。

だからこそ、POSの実績データを使って売場を管理することは、今や必須のスキルなのです。

「覚醒」のきっかけは、事実と気づき

その後、売場の数カ所を一緒に見直しました。

直近の実績データ(ベストレポート)を確認しながら、事実と重いとのズレを説明しながら改善点を説明しました。
私は売上ナンバーワンのトマトの売場で、「このトマト、売場改善すれば売上200%になるかもしれませんね」と声をかけると、チーフは笑いながらもこう答えました。

「200%は難しいですが、120%や130%は狙えそうですね」

このとき、明らかにチーフの表情に変化がありました。
「守りに入って何もしない」と言われていたチーフが、手応えを感じ、前向きになった瞬間でした。

私は気になった苺とカットフルーツの冷蔵平ケースの売場を修正して見せました。無駄なダミーを外し、ベースを再設定し、陳列を簡素化して整えたところ、チーフはこう喜びました。

「この陳列、悩んでたんですよ!すごくやりやすいですね。掃除もしやすくなりそうです」

このときの一言は、私にとっても嬉しいものでした。
仕事を「楽に・早く・楽しく」できるようにする――まさに、私の支援の目的が達成できた瞬間でもあります。

大切なのは「仕組み」と「きっかけ」

今回のケースは、どのスーパーにも起こり得る話です。
ベテラン社員、チーフ、店長、パートさん――。
誰もが「今までのやり方」から抜け出せなくなることがあります。

でも、少しだけ頭を柔らかくすれば、「もっと良い方法」は必ず見つかります。

そしてその方法の多くは、「簡単に・楽に・早く・結果が出る」ものなのです。

本当に必要なのは「知らなかった」をなくすこと

「できない」のではありません。
「やり方を知らなかった」「気づいていなかった」だけなのです。

だからこそ、上司や会社がやるべきことは、“やる気を引き出す仕組み”をつくること。

チーフが前向きに変わったように、実績が出ていない社員でも、やり方さえ伝えれば結果は出ます。
現場に眠る力を信じて、もう一度向き合ってみてください。

最後に

今、日本中のスーパーが「原価高」「人件費高騰」「人手不足」に直面しています。
だからこそ、一人ひとりが成長し、「仕事のやり方」を進化させていくことが何よりも重要です。

そして、何も教えてあげなかったら。

上司が、「あいつは出来ない」と決めつけていては、会社もベテラン社員も人生の大切な時間をムダにしてしまいます。

現場には、まだまだ改善の余地があります。
そして、それは「大きなチャンス」であり、「未来の利益」そのものなのです。

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