スーパーの経営戦略入門

2008年09月27日

バックルームが無かったら

在庫がバックルームにあるのが当たり前と思っている企業が、圧倒的に多いと思います。そして、多くの企業で、不必要な在庫を抱えている状態をよく目にします。

入荷したての商品や品出し準備のための商品、生鮮部門の加工前の仕掛り品などの在庫は一時的に必要です。しかし、それ以外の在庫は基本的に店舗では一切必要ありません。

今までの考え方(経験)からまったく発想を変えて、もし、店舗にバックルームが無いか、極端に狭いとしたらどうでしょう。今まで贅沢に、また、非効率に使っていた場所が無くなったら、どうしたらよいでしょう。

ほとんどの人は、今までの経験則から発想してしまいます。「こうあるべき」「こうなければならない」というやつです。土地が狭くて高い日本では、土地と人の生産性は、営業収支に大きな影響を及ぼします。発想を変えることができれば、可能性が限りなく広がります。

■ 仕組みと生産性の関係

私は、店舗レイアウトの設計もやりますが、バックルームを狭く出来れば、売り場を広くすることも出来ます。今までに無いコーナー(売り場)の新設や新規商品の導入によって、売上アップも可能になってくるでしょう。
また、売り場の尺数が増えれば、売れ筋商品のフェイシングを広く取り、売り場在庫を増やすことが出来ます。そうすれば、売れ筋商品の補充頻度や発注頻度も少なく出来ます。その結果、作業が楽に早くなり、人件費も削減できます。つまり、人に関わる生産性は劇的に改善します。

その他、バックルームを狭く出来れば、坪当たりの生産性がアップします。売上を上げないバックルームが狭く、その分を売り場に出来るのですから、資本効率から考えて当然のことです。

■ 効果的対応策

上記のことを実現するためには、

第一に、問屋やメーカーの倉庫から店舗の売り場までの『物流の仕組み』全体を完全に変えることが必要になります。
納品ロットや納品時間などを『現場最適化』で考え、変更することが必要になるでしょう。
そうなれば、バックルームで長時間停滞する在庫がなくなり、商品管理に当てる作業量が極端に減り、人件費を大幅に減らすことが出来ます。

第二に、アウトソーシングです。信頼できるベンダーに、商品加工や調理などを依頼して、バックルームで在庫が停滞することを極力なくしていきます。
野菜などは、袋詰めやパック詰めしてもらい、バーコードもつけてもらいます。そうすると、グロッサリーの商品と同じように、「入荷、即品出し」の仕組みが出来上がります。惣菜などは、「鍋・釜・包丁を極力使わない」仕組みに近づければ、調理器具やゴミなどの量も極端に減ります。

このように考えていけば、限りなく発想は出てくるはずです。(出てこなかったら、サミットリテイリングセンターにご相談ください。いい仕事しまっせッ!!・・・笑)

第三に、バックルームのレイアウトと設備の見直しです。物流システムやアウトソーシングの出来がよければ、各部門のバックルームの設備自体かなりスリム化してきます。
そして、バックルームの平面は基より、立体面を有効的に活用すれば、バックルームはかなりスリム化が可能になってきます。

このように、「であるから、出来ない」という発想から、「であるならば、どうする」という発想で考えるようにすれば、今まで無理だと考えていたことが、難無く現実化していきます。


■ 信頼できる社外のベンダーの協力と仕組みの変更

人や設備が少なくて運営できるということは、初期投資は勿論、ランニングコストも低く抑えられます。商品の在庫と同じように、人もバックルームも増えれば、リーダーの管理しだいでは、多くのロスが発生します。
バックルームや人時が少なくて運営できる仕組みづくりは、今後の営業戦略では、きわめて重要な項目です。今までの延長で考えてはいけません。

そのためには、物流やアウトパックなどルーチンのアウトソーシングを実行し、戦略課題に人時やお金を効率的に割り当てなければならないのです。

「アウトパックは、加工賃が高い」程度の考えでは、荒利益のことしか考えていないということです。向上させなければならないのは、営業利益です。荒利益はある意味、戦略上低く設定できなければなりません。

鍋・釜・包丁を使って、しっかり営業利益を出すことが出来る技術を持ったチームは良いのですが、営業利益は赤字がトントンで、従業員の給与所得も低いのでは、将来がありません。

例えば、「じゃが芋の袋詰め」という作業を考えてみてください。アウトパッカーは、それ自体がビジネスの核の業務なのです。生産性は限りなく高くなり、一袋あたりの製造原価は低く抑えられます。
一方、スーパーマーケットの核の部分は、「売り場作り」です。じゃが芋の袋詰めの作業は、数多くあるルーチン作業の一部分でしかありません。
「如何に良い売り場を作るか」を考える上で、じゃが芋の加工などしていられないはずです。

「営業利益」にシフトして、現状の行動を今一度見直しましょう。

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