コンサル・こぼれ話

2008年10月13日

パート社員のパワーを最大化する

先日、クライアント企業において、パート社員20名程度の「青果部門セミナー」を行いました。

テーマは「基礎訓練」です。
この会社のパート社員研修は、通常1回50人から60人程度で行い、座学が半分、技術指導が半分で行ないます。
しかし、今回は、少人数ということもあり、座学を少なくして、「一人ひとりの基礎技術の能力確認と改善指導」に重点を置いて行うことにしました。

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野菜や果物のカット技術やハンドラッパーの包装技術など、一人ひとり手取り足取りのセミナーです。新入社員研修並みの初期技能研修です。

作業時の段取り、作業時の姿勢、手や指の使い方、スピード、包丁の使い方や角度といった、かなり細かい部分まで指導しました。

内容としては、日々行なっているルーチンの作業なのですが、パート社員の皆さんは全員「真剣、やる気モード」です。会場は、熱気でムンムンしています。

自分が指導を受けている時は勿論、他の方が私の指導を受けている時も殆どの人が指導している私達のほうに熱い視線を注いでいます。

下手な店長セミナーや管理職セミナーより、何倍も真剣です。会社が投資したセミナー費用は、間違いなく早急に取り戻せることでしょう。

■ 「こんなやり方があったんだ・・・」

多少、「企業秘密」の部分もあり、細かくは言えませんが(笑…)、
今回教えたのは、
 ・「儲かる」キャベツのカットの裏技
 ・「儲かる」大根のカットの裏技
 ・「ロスの出ない」長いものカット方法
 ・「早くて、歩留まりの良い」パイナップルのカットフルーツ・テクニック
 ・「早く、楽に」両手作業の基本
 ・「早く、欲に、そして効果的な」カートの使い方
 ・「早く、早く、早く・・・」加工作業の段取り
 ・「早く、早く、早く・・・」補充作業の段取り
などの内容で、単なる動作訓練ではありません。

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カットフルーツなどの実技指導は、はじめての方も多かったのですが、それ以外は、入社以来、皆毎日やっていることです。出席者は、「何故いまさら・・・」という思いが、最初はあったに違いありません。

現状の基本的な作業を根本的に見直すことが出来れば、社員の技術は飛躍的に向上します。これは、何年も業務に携わっている経験のある社員、そして、正社員、パート社員に限らず、「やる気のある社員」には大きな転換点にもなります。

■ 「もっと楽に、簡単に、速く、安く出来る」方法

そして、私の切り口は、日々の作業を「もっと楽に、簡単に、速く、安く出来る」方法は無いでしょうか、という「問いかけ」から始めるものです。
 ・疲れないで
 ・あわてないで
 ・作業が速く終わる
 ・商品のロスの少ない
 ・時間のロスが少ない
 ・無駄な包装資材を使わないで
 ・お客様の持ち帰るゴミが少ない、環境に優しい
  ・・・・・・・
  ・・・・・・・
「やり方を身に付けよう」というものです。

聞くと「なーんだ」ということであっても、なかなか気付かないものです。一寸したやり方を変えるだけで、作業スピードや疲労度合いなど随分変わるものです。

■ 「目から鱗ですね・・・」、これが聞きたい

パートの方々があんなに真剣になるのは何故でしょう。
何時も行なっている単純な作業です。誰でも出来る簡単な作業です。

おそらく、「こんなやり方があったんだ・・・」というはじめての経験をしたからだと思います。そしてそれが、単純で日々「当たり前」と思ってやっていることだったから、なおさらではないでしょうか。

「目から鱗ですね」(笑)と言ってらっしゃった方が沢山いらっしゃいました。この言葉を頂いたとき、私は、とてもうれしく思える瞬間です。

「こんなことでも、一寸工夫すれば、やり方はあるものですね」
 「まだまだ、やることありますね」

皆さんの自信に満ちた、笑顔がとても印象的でした。現場に帰り、パート社員の皆さんの小さな日々の改善に期待したいと思います。


■ クレーム対応と接客

セミナーの終わりには、必ず「質問の時間」を取ります。
今日のセミナーの中でのことや日常業務に関わることなど、そして、どんなに小さいことでも受け付けます。

「どんな些細と思われるようなことでも、遠慮なく質問してください」と私が言うと、一人のパート社員の方が手を上げました。
 「クレームのことなんですが、先日、玉葱をお買い上げいただいたお客様から、品質が悪かったとお叱りを受けました。特にここ1ヶ月の間に同じお客様から、数回ありました。ところが、持ってこられた商品を見ても何処が悪いのか分かりません。
そして、・・・・・・・・・・・・。クレーマーみたいなんですけど、どう対処したら良いでしょうか」

するとすぐに他の方からも、
 「うちの店でも同じようなことがあって困っています。・・・・・・どう対応していいか分からない時があります。先生、どういう対応をしたら良いのでしょうか」
というのです。

私は、
 ・お客様に対する誠意を持った対応姿勢
 ・上司への報告
 ・適切な返金や商品交換などの具体的対応
 ・スピーデイな対応とフォロー
などを説明しました。

そして私は、逆に質問をした方々を含め、参加者全員に質問しました。

 「お店では、お客様一人ひとりにちゃんとご挨拶をしていますか」

そして、私は続けました。
 「お客様のお顔を覚える努力をしていますか」
 「こんにちは・・・」
 「お暑くなりましたね・・・」
 「いつも有難う御座います・・・」
 「お客様に対して、日頃からちゃんとしたご挨拶が出来ていないと、クレームなどは起きやすくなります。お客様とコミュニケーションをとる努力をしましょう」

そして、
 「「イッラシャイキセェ~ッ」の掛け声ではなく、お客様の顔を見て笑顔で挨拶する努力をしましょう」
 「お店の雰囲気や対応が良くなれば、クレームの中身が変わるかもしれません」

 「クレーム対応は、重要な事です。しかし、それを只続けていただけでは、根本的な善にはならないと思いますよ」

質問していただいた方は、
 「なるほど、良く分かりました。その場の対応ばかり考えていました。明日から早速やってみます。有難う御座いました」

お客様は、居心地の良い店で買い物したいはずです。
居心地の良い、明るい親切な社員のいる店でクレームを言う人は、ほとんどいません。


■ 仕事もスポーツと同じ

「パート社員の戦略化」ということで、パート社員教育に力を入れている企業が沢山あります。パート社員の方々が刺身を作ったり、惣菜やカットフルーツを作ったり、肉を切ったりと、年々その内容も高度化し、すばらしい集団になっている企業を現実に目にします。

しかし、一方で、基礎が出来ていない企業もはるかに多くあります。スーパーマーケットでは、多くのパート社員の方が働いています。一人ひとりの確実な技術訓練を行えば、そして、パート社員の方々に多くのアイデアを出していただければ、まだまだ成長の可能性は十分あると思います。

パート社員は、人時予算の単なる要員ではありません。今いらっしゃるパート社員の方々に、少しずつ確実に基礎的技術の習得をしていただければ、大きな戦力になることはいうまでもありません。

スポーツでも、筋肉トレーニングや柔軟体操、ウォーミングアップやダウンなど基本や基礎を徹底してやればなりません。そしてそれが出来てこそ、確かな技術を習得する基盤ができるのです。

もう一度、自分のチームの基盤の部分を確認してみてください。

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