スーパーの営業戦略入門

2013年04月15日

梅雨期のロス対策・精肉部門【食品商業5月号】掲載

4月.5月になると気温も上昇し、少し動いただけで汗ばむ頃、温度変化に敏感に反応する肉を扱う部門としては管理面にも気を使う重要な時期です。又、入社、異動などで初めて売場担当として働き始める人も多いタイミングです。

そんななか職場で耳にする機会が多いのがロス、ロスを辞書で調べて見ると[むだに費やすこと、損失]と引けます。

ロスには、目で見えるものと見えづらいものがありますが、ロスには大きく分けて、商品ロス(歩留、商品化の不具合、値引き、廃棄、万引き)と機会ロス(欠品、品切れなどタイムリーに商品供給が間に合わない状態)と作業ロス(作業動作に伴って発生するムダ、ムラ、ムリのダラリ現象)が挙げられます。

ここでは、現場によくある事例を元に、対策を考えて見ましょう。

【商品ロス】

商品そのものに起因するロスをいい、目で見え、数値でわかるものを見てみましょう。

代表的なものをいくつかあげると


『1つ目は荷受検品から発生するもの』

・荷受商品の加工年月日(納品基準どうりですか)
・荷受商品の包装状態(破れ、つぶれ、ピンホールは無いか)
・荷受商品の実量と伝票との照合(実量と表記量があっているか)

あなたのところではルールに従って確実に実行できていますか?
※加工年月日…消費期限間直の品は、チルド状態でも熟成が進み、商品化をしてもすぐに退色や脂肪の酸化など、商品価値を落としてしまう恐れがあります。

原価が安くなったと、安易に仕入をするのは慎むべきで、品質を見極められる人に判断をしてもらいましよう。


『2つ目は歩留から発生するもの』

・原料そのものに由来する品質(カット状態、整形、脂肪厚)が仕入基準に合っていますか

例えば豚ロース肉の場合バラ先が (ロース芯から指2本、およそ3cm程度の所)長くカットされていたり、脂肪厚が8mm以下のところそれ以上付いていたり、又、小割りが雑で、ナイフが多く入っていたり、肩系では、ウデ、肩ロースの首部の洗いの悪さによる汚れなど様々なマイナス要素があります。

荒利益計画は個々の歩留を基に売価を設定しているので、ベースとなる歩留が狂ってくることが困ることなのです。これは入荷した原料の状態が悪く、余分なトリミング作業を必要とし、出来高が計画より大幅に違ってくることと認識しましょう。

※対策…入荷時の商品チエックをしっかりとすることが重要。仕入部門が独立している所では、店舗に入荷されたものが基準に合っているかを定期的に直接目で見て確認する商品チエックの実施が必要です、不備があるならば早急に取引先に改善依頼を出すと共に、双方の信頼関係を築き、安定した運営体制をとることです。


『3つ目は技術不足によるロス(知識不足や加工技術の未修練) 』

・部位の特性を知り商品化することが必要です。

部位により、(場所は端なのか中なのか)用途は(うす切り、ステーキ、焼肉、しゃぶしゃぶ)何に使うのか、厚さはどの程度なのか、盛り付け(トレーから肉がはみ出ていたり)、包装にシワがあったり、内容量が適切か、など様々ですが、価値ある商品を作らなければお客様からは認めてもらえず売れ残り、値引き、廃棄につながるものです。

・商品の陳列はどのように行われていますか(当日加工とアニキ(残品)商品の混合)

先入れ先出しの原則はいうまでもないが、よく見られる並べ方は、アニキを手前に上に重ねるなど目に止まりやすいところに置くのが一般的なやり方である。お客様の行動を見ていると気付くと思いますが、お客様は1日でも加工の新しいものや、消費期限の長いものを求め、ケースの中を探します。結果、陳列は乱れ、バッチも入り乱れた売場となり、頻繁の手直しも必要となります。

2F以上の陳列面を取っている商品は、客導線に対して最後のほうに集約し、導線の頭には高鮮度の当日加工品を並べるのです。
これは、見切りの判断や、作業の手際よさにも影響すると共に、何よりも、お客様の目に最初に入る高鮮度商品を見てもらうことで売場全体の鮮度感を感じてもらえるのです。

・ケースのロードライン(陳列許容線)を越えた陳列はしていませんか

概ね生肉の保存温度は4℃以下となっていますが、ロードラインを超えると冷気が回らず鮮度劣化した商品を販売することになります。ボリュームをつける、売込商品を目立たせたいとの思いから、このように陳列をしている場面をよく目にしますが、お客様にはメリットはありません。なぜならば悪い商品を買わされているからに他ならないからです。

※基になるのは各社の商品化基準や作業基準であります。修練の基本はOJTですが、ややもすると、口頭で話した(教えたつもり)、後は本人のやる気だけと思っているところはないですか。基本技術となる安全操作や衛生管理は手を抜くことなく具体的に実施したうえで、進捗を見るチエック&フォローの計画を立てて行い戦力UPを図りたいものです。


『4つ目は量りこみによるロス』

売場でよく展開されている定貫販売(○○g入って○○円)です。お客様にとっては1パック価格が見やすいため、買物しやすい商品です。ここで注意したいのは、表記量と実量の誤差です。実量が1gでも少ないとお客様からの信頼をなくすだけでなくコンプライアンス(法令順守)違反になり、再起不能の営業失態を招く大変重大なことになるからです。

商品化では、これを回避するために慎重に量目を量る作業を行う(作業スピードの悪化)が、作業の流れの中でやや多目に入れ込むことが多いのではないでしょうか。

例えば200g入って500円の商品を1日100Pの販売計画をしたとします。量りこみを5g/1Pとすると500gであり、2.5P余分に原料を増やさないと作れないことになります。これがあと、数アイテムあり、一週間、一ヶ月実施した時のことを考えると相当な量を準備しなければならず、この誤差がロスにつながるものです。

※定貫販売は確かに効果ある販売方法ですが、量りこみの割合、販売数など計画を立て、間違いのないよう充分に考慮し活用しましょう。


『5つ目が値引きと廃棄ロス』

値引きは店舗で多く目にする光景で、今では管理項目として数値で捕らえることが出来る重要な要因です。

値引きが、個々に決められた販売期限や時間に合わせて、パート社員・アルバイト社員が、○○円引き、○○%引きのシールを貼るだけの処理作業として終わっていませんか。

例えば1P500円で30%の値入がしてある商品があるとします、これを半額にしたとしましょう、この時の商品の値段は250円となり、売上で250円、利益では商品原価の350円を100円損失したといえます。このように、値引きが多くなればなるほど売上、利益の両面で目標(計画)と大きく開きが出てくるということです。

今では、単品ABC分析データーから販売数、値引き状態まで見て取れるところが多いと思います。3日もしくは4日のサイクルでデーターを見、頻繁に上がってくる単品を徹底してマーク、数量、F数の調整を行い、場合によってはアイテムカットも必要でしょう。

販売予測と製造数(発注)との整合性を見る習慣化が出来ているかが重要なポイントです。
商品廃棄は論外、早期に見切り、売り切る手段を講じましょう。


【機会ロス】

チャンスロスとも言われ、特に目に付くのが商品の欠品、品切れです。

開店時やピーク時の売場状態はどのようになっていますか。開店時の売場は、お客様をお迎えする品揃え(定番商品、売込商品)が数量ともに充分に準備ができていますか。

※ここで重要なのが、陳列数の基準です。お客様目線からみた選択では1Pでは選べない2Pではどちらかを選べ、初めて3Pでどれにしようかと選ぶことが出来る。このことから1SKU当たり3Pが単品陳列数と設定、フエイス数×3を基本陳列数とすることが出来る。


開店準備の注意点

優先の意識付け…開店時100%品揃えを完成させることに注力せよ
作業の優先順位、製造数の具体化、口頭ではなく指示書により必要なものを必要な量だけ作るに徹することが重要。

ピーク時対応

時間帯別客数データーから自店のピーク時間をおさえましょう。ピーク時間の1時間前には質、量共に最大の出来栄えにしましょう。


【作業ロス】

精肉部門の作業は荷受から始まり→商品加工→包装・値付け→陳列と一連の作業が日々行われています。
効率よく作業をこなすには、手順を含めた正しい作業動作や道具の正しい使い方をしないと、ここにロスが発生してきます。

・スライサーの丸刃は毎日アタリの調整をしていますか

(切れ味が悪いとスライスクズが多く出るだけでなく、肉の断面もザラザラになり商品の見栄えも悪く、尚且つ変色退色が早くなります。又作業も遅くなります)

・トレーカートはうまく活用していますか

4~5段の品出し用は、棚板に満遍なく商品を載せて、一回で多くの補充が出来るよう使いましょう。(欠品以外) 
※効率よく作業を進めるには、出来るだけケースに近づけ、両手作業でスピーディーに

・指示は指示書(加工)を使って、作業手待ち時間をなくそう

・定位置管理の徹底

私たちの仕事場は、1人ではなく複数の人員で運営するチームワークで成り立っています。

作業に係わる道具や機器、資材や資料などは、どこに、何があるかを誰でもがすぐにわかることです。頻繁に使うものは手元に、頻度の低いものは他のスペースに、品名カードを設置して整理整頓をすることです。使ったら元の場所に戻す習慣化が大事です。

※定位置管理は全てのことに優先して実行することが何よりのロス対策になると心得ましょう。


あとがき

これからの季節、焼肉商材の動きも活発になってきます。
とりわけ調理の簡便性を踏まえた味付け肉の展開は、ますます盛んになってこようかと思います。

ここで注意したいのがロス対策と称し、管理基準を越えた商品による二次加工の商品化は決して行ってはいけません。

品質の劣化した材料で商品を作っても美味しくは無く、お客様は価値を認めてくれはしないからです。鮮度もよく、一次加工した商品から味付けを作る場合、タレはトッピングのサービスをしただけと考え一次加工した日時で管理しましょう。

皆さんのところにも、名店といわれている焼肉屋さんがあると思います。

切りたてのみずみずしい肉にさっとタレがかかり見るからに美味しそうな商品を提供していただいていると思います。

原料の吟味から商品化、お客様のテーブルに届くまでしっかりと管理のプロセスを踏んでいるからほかありません。小売りで提供する我々の焼肉も、よき手本を見習い価値ある商品でお客様に喜んでいただきましょう。

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