スーパーの業務改善入門
2009年02月23日
定番在庫の削減と適正化
店内在庫の適正化は、
1.発注担当者のスキル
2.発注システムや物流システムの現場にとっての使い勝手の良さ
3.1と2をサポートする情報システムの出来
で決まります。
発注や物流のシステムがすばらしい出来のいいものであっても、発注担当者のスキルが不足していたり、それを支援するはずの情報システムが現場にとって役に立たなければ、良い結果は望めません。
また逆に、発注システムや物流システムが、現場(店舗)の使い勝手を無視した、本部最適化のシステムでは、現場は良い結果を出せません。
ここでは、店舗の定番在庫が最適化できない、主な原因とその対策について考えます。
1.発注担当者がスキル
発注点や販売数、リードタイムなど基礎的な知識不足により、判断能力が低いため、
欠品や在庫過多になりやすい。
<対 策>
発注担当者に、仕入れは『商売の基本』であるということ同時に、『儲けの基である』の重要性をoff-JTで教育する。
そして、実地指導と定期的にフォローを確実に行い、発注担当者に必要スキルを習得(向上)させる。
□□□スキルアップのための改善ポイント□□□
(1)販売実績データ確認と活用
・直近1ヶ月のPOSデータの単品別・販売実績レポートを棚番や分類毎に出力する
・週単位(グロッサリー)の平均販売実績(数量)で、ランク分けをする
※日配や生鮮部門は、1日当たりの平均販売数量でランク付けする
(2)上記の情報をプライスカードに色分けシールなどを使用し表示する
(3)発注点で管理するものと最大在庫量で管理するものとに分類する
□発注点の設定で管理するもの
ex.売り場在庫が、2個~3個になったら最低ロットを発注する
□最大在庫量の設定で管理するもの
販売数量が多いものは、最大在庫量を設定し、納品日(時間)にその数量になるように発注する
ex.納品日(時間)の最大在庫量、50個の商品の場合
A 発注時在庫 30個
B 次回納品時までの見込み販売量 10個
C 発注量=50-(A-B)=30
(4)変動要因(季節、天候、気温、地域行祭事、競合店動向、会社企画など)の確認
a.特に今後、販売量が伸びる物や低下が予測される物
b.天候や気温の変動によって販売数量が変化するもの
c.地域の運動会や祭りなどの特殊要因
d.競合店のチラシ、販促企画など
e.会社企画(月間奉仕品、競合店対策など)商品
※事前の販売計画で担当者とコミュニケーションを密にして、動向を確認しフォローする
(5)リードタイムの確認
・発注時から納品日(時間)までの時間差とその期間の販売予測数を予測
して発注数量を設定する
(6)発注締切り時間の確認と遵守
a.注締切り時間の確認
b.発注締切り時間に遅れた場合の対策を理解
(7)現場で、担当者の(1)から(6)の作業を確認し、必要に応じて適時改善指導する
2.物流システム
納品ロットや納品時間、納品回数など、物流最適化のシステムでは、現場で不都合が発生してしまう場合があります。
(1)定番の発注ロットが大きい(ケース単位)
ベンダーからの納品が、ケース単位の納品であるため、ケース内のすべての商品を陳列できず、残品をバックルームに引き上げざるを得ない場合です。このような場合、発注精度を上げても売り場に全量陳列できず、残品は出てしまいます。
SSM(スーパー・スーパーマーケット、大型のスーパーマーケット500坪以上)になってくると、ケース単位での納品でも殆んど売り場に出てしまいます。しかし、通常の300坪かそれ以下のSMになると、よほど商品のアイテムやSKUを絞り込まないと、残品をバックルームにストックせざるを得ません。
<対 策>
ここでは、あくまでもバックルーム在庫をゼロに近づけて、結果として、生産性及び営業利益を上げるという戦略で説明します。
方法として、ベンダーに納品単位の変更を依頼することと、店舗側は、販売実績や販売計画に合わせて、フェイシング管理(拡大縮小)を柔軟に行なうことが、効果を上げる上で重要です。
具体的には、
a.発注ロット(納品ロット)を1個に変更する
店舗において、商品を出し切ることを前提に仕組みを考えます。
販売量の多い商品は、店舗ごとの判断で、ケースで発注するようにします。
タイプ1
・自社の物流センターで、バラ納品のためのピッキング作業を行なう
タイプ2
・すでに上記のシステムを持っているベンダーに、業務を委託する
b.販売実績を確認し、死に筋など商品の絞込み(販売中止)を行い、1品当たりのフェイシングを広くする
c.単品ごとの販売実績(数量)に合わせて、A・B・Cランク順にフェイシングの拡大(1列でも多く取る)とDランク商品の縮少(1列~2列程度)を行なう
ことが必要です。
(2)納品回数や納品時間が不適切
発注から納品のリードタイムが長くなれば、発注精度は低下します。
特に生鮮や日配部門では、回転率が早く誤差が生じやすくなります。基本的には、毎日発注、毎日配送の仕組みが理想的です。
また、発注精度をアップする上から、完全補充後の発注が絶対条件になりますから、それまでに補充作業が完了するための納品時間の設定が必要です。
3.情報システム
特に、POSのデータが「使われていない」。「使い物にならない」という現状が多くあります。
現状のシステムで、使える「単品管理情報」を確認し、1の(1)から(3)の作業に活用する必要があります。
<特に活用性の高いデータ>
a.単品別・日別・曜日別、販売実績
直近の単品の曜日別販売数量などは、生鮮品や日配品の発注には、大きな効果が期待できます。
1枚のレポートに30から40SKUが表示されれば、発注や陳列在庫の確認など、売り場でも使いやすく有効です。
b.期間別・ベストレポート
1ヶ月や1週間、指定期間など、一定の期間の順位確認、売上や販売数量の確認など売り場作りや販売計画に活用できます。
c.グループ別・ベストレポート
各種プロモーションの販売実績を確認するのに効果的です。販売計画と実績の確認と次回企画時の計画の基になります。
現場では、この他にも色々な障害があると思いますが、以上のことを実行されれば、大幅な改善効果が期待できます。
確実に計画を持って実行することです。
在庫が適正化されれば、作業は、「楽に」、「スムーズに」、「早く」遂行できるようになりますし、余った時間を付加価値作業にまわすことが出来ます。
私が業務改善のセミナーなどで、参加者に「何のために業務改善をするのですか」と尋ねると、
・営業利益の改善
・損益分岐点の改善
・生産性の向上
・競争力アップ
などの答えが返ってきます。
留まることのない競争。業態を超えた競合。
低価格戦略や新しいサービスを付加した戦術の競合企業の改装や新規出店など、商圏環境は益々厳しくなるばかりです。
経営の目的は、会社の『継続』です。
営業利益の拡大や損益分岐点の改善、生産性や人時生産性の向上などは、この目的達成のための戦略や戦術、また方法です。
会社の継続のためには、
会社で働いてくれる社員が、やり甲斐や自信をもって働ける(働きやすい)環境づくりをすることが大前提です。
社員の満足の実現
会社の継続のためには、
1.社員の職場環境の改善と向上(社員とその家族の時間と人生を大切に考える)
2.お取引様との良好な関係づくり(お取引企業様の適正な利益の確保)
3.会社の営業利益の改善と向上(適正な利益の確保)
4.お客様への質の高い商品とサービスの提供
5.地域への貢献(雇用、納税、地域行事などへの参加など)
が欠かせませんし重要です。
また、「お客様の満足」という事が、会社や現場で、しきりに唱えられますが、沢山のお客様をお迎えするスーパーマーケットでは、すべてのお客様に満足していただくことはなかなか難しいことです。
基本的には、不可能に近いこといわざるを得ません。
「お客様に満足するお買い物をしていただければ、利益は勝手についてくる」というようなことも良く聞きます。間違ってはいません。その通りだと思います。
しかし、
私が常々違和感を覚えるのは、「社員の満足」という言葉はあまり聞こえてこないことです。
私は、
1.社員の満足
2.お取引様の満足
がある程度実現できていれば、
3.お客様の満足
に、確実に繫がって来ると考えています。
お客様に満足していただくためには、「社員の満足」が絶対条件でありますし、確実な方法なのです。
労働時間と生産性
サービス残業や、勤務地域における相対的に見た場合の低賃金など、現場は多くの問題を抱えています。
労働環境の観点からは、社員の満足は程遠いように思えの会社も少なく無いように思います。
セミナーで「週休2日、週40時間労働が、一般社員の本来あるべき勤務時間です」というと、聞いている参加者からの意見は、大きく2つに分かれます。
圧倒的に多いのは、
「そんな時間では、仕事は終わりません」
「売り場がガタガタになります」
というような、意見です。
一方少数派のほうは、
「具体的にどうしたら、実現できますか」
「教えてください」
という意見です。
社員満足を考えている会社は、どちらか・・・。言うまでもありません。
前者は、なかなか生産性が上がらず、長時間労働の割りに賃金も低かったりします。
「スーパーとは・・・、仕事とは・・・、こんなもんだ」
「そんなに甘くない・・・」
と考えています。結果的に何も変わりません。
後者の場合は、改善を続ければ、近い将来週休2日、週40時間が実現できるでしょう。
「何をどう変えれば・・・・・」
「何を止めれば・・・・・」
「本部は、どう対応すれば・・・・・」
などと、考え行動していきます。
結果的に、時間の経過とともに生産性が上がり、社員の賃金も高く設定できる可能性が出てきます。
限られた時間をどう有効利用するかと目的を持てば、自ずと取るべき行動が徐々に見えてくるはずです。
作業と作業工数の削減
スーパーマーケットの店内作業数は、200を超えます。
しかし、作業種毎の必要時間数を割り出してみると、加工作業と補充作業、その他発注作業などが圧倒的に多いことが解ります。
これらの作業と関連作業に対して、店舗の『作業訓練』と、本部の『システム改善』を同時に行なうことが出来れば、必要時間数の削減は十分可能です。
店舗では、
・作業指示書の活用
・カートの徹底した効果的活用・・・カット台、ミニキャリア、
カートラック、カーゴテナーなど
・動作訓練・・・両手作業、作業位置、その他
・バックルームのレイアウト改善・・・作業導線管理
など。
本部のシステムとしては、
・商品の店着時間・・・生鮮・日配は早朝。クローサリーは夜間補充前(発注前)
・納品ロット・・・出し切り、使い切り
・POSの実績データの活用性・・・発注数や在庫数の割り出しが容易
・アウトパック・・・鮮度を念頭に外注、ソースマーキング処理
などが実現できれば、店舗の必要人時数は、確実に削減できます。
また、これらの作業を削減しサービス残業に終止符を打つこと。
そして、陳列演出や販売計画、接客(接遇)などの訓練など、『戦略分野』へ人時を振り向ける努力が必要です。
これらのことによって、社員の意識も変わってきますし、行動に実績(結果)が伴うようになってきます。
業務改善は、現場の社員の仕事のしやすい環境の実現
スーパーマーケットの生産性がなかなか改善できない理由は、店内作業の種類や作業工数が多いことに大いに関係しています。
ましてや、本部の物流や情報、発注などの支援システムの出来が悪ければなおさらです。
差別化戦略の実現のために、全員でアイデアを出し合う地域密着型の店舗運営が生き残りの鍵であることは、誰もが感じて来ていることであると思います。
今後、現場の社員の方々は、よりクリエイティブ(創造的)な業務へウエイト(軸足)を移す努力が必要です。
店内在庫と店内の単純作業の工数と人時数を削減できれば、時間的にも体力的にも余裕が生まれます。
時間的、体力的に余裕が生まれれば、自ずと接客の笑顔も本物に近づくことでしょう。
「社員の満足」が「お客様の満足」に繫がります。少し考え方を変えてみては、いかがでしょうか。
本部も店舗も、取るべき行動を変えるべきことが解ってきます。
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■会議の生産性アップで、スーパーマーケットが変わる! (前編)www.summit-rc.com/case/2714/
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