コンサル・こぼれ話

2010年10月07日

心を育てる良い話

ソニー生命のライフプランナー 丸山拓児から頂戴したとても、とてもいい話です。
皆さんにお伝えします。

◆縁を生かす

先日、新聞の朝刊各紙に掲載された一編のエッセイが
静かな波紋を広げています。

それは知る人ぞ知る月刊「致知(ちち)」という雑誌の全面広告でした。

長くなりますが全文を引用します。

(ここから)

「縁を生かす」

その先生が五年生の担任になった時、
一人、服装が不潔でだらしなく、
どうしても好きになれない少年がいた。

中間記録に先生は
少年の悪いところばかりを記入するようになっていた。

ある時、少年の一年生からの記録が目に止まった。
「朗らかで、友達が好きで、人にも親切。
 勉強もよくでき、将来が楽しみ」
とある。

間違いだ。他の子の記録に違いない。

先生はそう思った。

二年生になると
「母親が病気で世話をしなければならず、
 時々遅刻する」
と書かれていた。

三年生では
「母親の病気が悪くなり、疲れていて、
 教室で居眠りする」

三年生の後半の記録には
「母親が死亡。希望を失い、悲しんでいる」
とあり、
四年生になると
「父は生きる意欲を失い、アルコール依存症となり、
 子どもに暴力をふるう」

先生の胸に激しい痛みが走った。

ダメと決めつけていた子が突然、
深い悲しみを生き抜いている生身の人間として
自分の前に立ち現れてきたのだ。
先生にとって目を開かれた瞬間であった。

放課後、先生は少年に声をかけた。

「先生は夕方まで教室で仕事をするから、
 あなたも勉強していかない?
 分からないところは教えてあげるから」

少年は初めて笑顔を見せた。

それから毎日、
少年は教室の自分の机で予習復習を熱心に続けた。

授業で少年が初めて手をあげた時、
先生に大きな喜びがわき起こった。
少年は自信を持ち始めていた。

クリスマスの午後だった。
少年が小さな包みを先生の胸に押しつけてきた。
あとで開けてみると、香水の瓶だった。
亡くなったお母さんが使っていたものに違いない。

先生はその一滴をつけ、
夕暮れに少年の家を訪ねた。
雑然とした部屋で独り本を読んでいた少年は、
気がつくと飛んできて、
先生の胸に顔を埋めて叫んだ。

「ああ、お母さんの匂い!
 きょうはすてきなクリスマスだ」

六年生では先生は少年の担任ではなくなった。
卒業の時、
先生に少年から一枚のカードが届いた。

「先生は僕のお母さんのようです。そして、
 いままで出会った中で一番すばらしい先生でした」

それから六年。またカードが届いた。

「明日は高校の卒業式です。
 僕は五年生で先生に担当してもらって、
 とても幸せでした。おかげで奨学金をもらって
 医学部に進学することができます」

十年を経て、またカードがきた。

そこには先生と出会えたことへの感謝と
父親に叩かれた体験があるから
患者の痛みが分かる医者になれると記され、
こう締めくくられていた。

「僕はよく五年生の時の先生を思い出します。
 あのままだめになってしまう僕を
 救ってくださった先生を、神様のように感じます。
 大人になり、医者になった僕にとって
 最高の先生は、
 五年生の時に担任してくださった先生です」

そして一年。
届いたカードは結婚式の招待状だった。

「母の席に座ってください」

と一行、書き添えられていた。


本誌連載にご登場の鈴木秀子先生に教わった話である。

たった一年間の担任の先生との縁。
その縁に少年は無限の光を見出し、
それを拠り所として、それからの人生を生きた。
ここにこの少年のすばらしさがある。

人は誰でも無数の縁の中に生きている。
無数の縁に育まれ、
人はその人生を開花させていく。

大事なのは、与えられた縁をどう生かすかである。


このエッセイは月刊「致知(ちち)」2005年12月号において「巻頭の言葉」として
掲載された言葉です。
筆者は致知出版社代表取締役兼月刊「致知」編集長の藤尾英昭さんです。

月刊「致知」という雑誌をご存じないという方も多いかと思います。
それもそのはず、この雑誌は書店では販売していません。
この雑誌を読むためには「年間購読」をしなければなりません。

私はこの月刊「致知」をちょうどまる3年購読しています。
インターネットで検索していてたまたま見つけました。

そして、購読し始めてすぐに手放せない雑誌となりました。
なぜならば心に響き、心を育て、心の栄養となる雑誌だからです。

普通の雑誌であれば、おそらく数ヶ月も経てば情報が古くなり、
読む価値はどんどん下がっていくと思います。

しかし、この月刊「致知」は5年でも10年でもその価値は変わらないと
いえます。極端に言えば30年経ったとしても読み返したい雑誌です。

月刊「致知」は「人間学を学ぶ雑誌」を標榜しています。
有名無名に関わらず、古今東西、真剣に仕事に取り組んでいる人に
スポットを当て、その人の生き方、考え方から学ぶ雑誌です。

創刊から33年経った今でも、
「いつの時代でも、人生にも仕事にも真剣に取り組んでる人がいる。
そういう人たちの心の糧となる雑誌をつくろう。」という創刊の理念が
脈々と受け継がれています。

月刊「致知」ホームページ:
  http://bit.ly/azcseo

「心に響く小さな5つの物語」藤尾英昭著・片岡鶴太郎画(致知出版社)
  http://amzn.to/cPNeaX (アマゾン)
  ※「縁を生かす」を含む5編の「巻頭の言葉」が収録されています。

以上、皆さんも『致知』、購読されてはいかがでしょうか。

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