スーパーの業務改善入門
2017年10月11日
時給を上げて、 人件費を下げる ⁉ 究極の生産性向上策‼【商人舎Magazine10月号】原稿
人手不足と時給の高騰。そして、長時間労働や残業時間の問題など、企業によっては深刻化している問題だと思います。
これらの問題は、オペレーションの仕組みが出来ていない中小零細企業とって、大きな課題であると思います。
生産性が低い企業にとっては、今後会社の存続にもかかわってくる問題で有ると思います。
今回は、その対応策について考えてみたいと思います。
実際にあった事例を紹介します。
ある小さなスーパーマーケットを立ち上げるお手伝いをした時のことです。
名も無い。立地も大して良くない。資金も少ない。
そんな中で、パートやアルバイトを募集しなくてはいけない状態でした。
「募集しても、誰も応募してくれないんじゃないか?」という不安もありました。
しかし、結果は、ビックリするぐらい多くの方に応募していただきました。
上手くいった理由は、簡単なことです。
周りより圧倒的に良い条件で募集広告を打ったことです。
先ず高い時給を設定しました。
そして更に、「日曜日は休んでもらって結構です」「たまに土曜日出勤してくれますか」という好条件付きです。
沢山の人が応募して集まってくれましたので、面接会には長い時間を費やしました。嬉しい悲鳴です。
明るくて人当たりが良い人。小さい子供を持った若いお母さんたち。明るくて体力の有りそうな学生さんなど、結果的に、多くの良い人を採用することが出来ました。
人手不足が常態化し、時給も高騰しています。また、最低時給も上がるという中で、企業側はこの先、どの様な行動を取らなければならないのでしょうか。
小手先の対応しか取れなければ、新しい人を募集出来ないどころか、そのうち、今働いてくれている従業員の離職率も上がる可能性が高くなります。その様なことになれば、売場の維持レベルも低下することになります。
企業にとって一番重要な、優秀な財産(人財)を失うことになれば、企業の競争力を低下させ、結果的に売上や営業利益を落とす方向に向かうことになるでしょう。
そうならないためには、コンセプト(進むべき方向)を明確にして、実現のための確かな戦略を立て、その為の仕組みとオペレーションを組み立てることが重要となります。
こう書くと、難しいと考えてしまう方も多いかもしれませんが、決してそうではありません。
ピンチをチャンスに変えれば良いだけです。方法は、幾らでもあります。
「生産性を上げることを、真剣に考えるべき時」が、今来ていると私は思います。
働いている方からしたら、時給が高いことは望ましいことです。
でも逆に、経営者側にとっては、人件費が上がるという心配も有るでしょう。
問題は、使う側の『使い方』に有ります。
時給が高くても、それ相応の『仕事量(処理量)』や『仕事の質』を上げてもらえるような仕組み、そのための教育訓練が出来る体制であれば、時給が高いことは全く問題ないことです。
逆に、5年10年と勤務しているベテランのパート社員でも、その職能レベルが高くなければ、時給当たりの生産性が低くなり、相対的に時給は高いものとなります。
上記の事例のケースの場合、
例えば、レジのパート社員は、レジだけではなく、グロサリーの品出しや、定番発注なども交代で熟します。
また、計画的にシフトを組んでいても、天候などの変化によってお店が暇になれば、ルールを決めていて、他の部門の応援や教育訓練に移ります。
グロサリーや日配担当のパート社員は、補充用カートの効果的活用、両手作業など基礎作業の訓練を受けることにより、時間当たりの作業処理スピードが速くなり、それに比例して処理量も多くなります。
また、定番の精度の高い発注は勿論、販売企画の立案や、他の担当者が休みの時の担当外のカテゴリーの発注、そして、レジの応援も行います。
学生のアルバイト社員も同じように、レジ、グロサリーの定番補充など、横断的に作業を熟します。
土曜日や日曜日は、パート社員の休みをカバーするために、早朝から、パンの品出し、日配品の品出しなどを行い、その後レジを担当するという段取りです。 こちらも、レジが暇になれば、他の部門の応援を行います。
このように仕組みを作ることにより、時間当たりの作業処理量は確実に高くなり、質の面でも、時間の経過とともに、大いに高まることになります。
この様に、作業(人時)の無駄が少なくなり、生産効率の指標である人時売上高が高まります。
粗利益率が適正であれば人時生産性を高位に保つことになり、会社もパート社員に対して、高い時給を払える体制になるのです。
上記は中型店の事例ですが、店舗規模が大きくなれば、更に生産性は高くなり、得られる効果は拡大することになります。
下の【表・A】は、粗利益高と各経費、そして、営業利益との関係を表した相関図です。
この場合、粗利益高に対する人件費の割合である労働分配率は、人件費が10で、粗利益高が25ですから、
10÷25で、40%と言うことになります。
一方、【表・B】は、人時生産性に対する時給(福利厚生なども含む平均額)を現しています。
この【表・B】を見たことのある人は少ないのではないかと思います。
これは、現場の生産性を考える上で、非常に重要となるフレームワーク(考え方の枠組み)なのです。
【表・B】の場合、店舗の人時生産性が4,000円で、時給の平均が1,600円ですから、
1,600円÷4,000円で、労働分配率は【表・A】の場合と同じく40%となります。
一方【表・C】の場合、時給が1800円と【表・B】の場合より、200円上がっています。
そして、人時生産性も同じく4500円と上がっています。
この場合、労働分配率は、1800円÷4500円で、同じく40%になります。
一方、営業利益(1人時当たり)は、1200円になり、表Aに比べて、1.5倍になっていることがわかります。
更に、【表・D】ですが、
時給は同じですが、人時生産性が4800円と高くなり、営業利益は、1600円で、【表・B】の場合の2倍になっていることがわかります。
あくまでも、人件費以外の固定費が同じであると仮定してのシミュレーションですが、営業利益の拡大を考えるとき、一人時当たりの粗利益高である人時生産性のアップが重要になってくることは理解していただけると思います。
人時生産性(粗利益高÷投入人時)を向上させるためには、
① 現状の投入人時で、粗利益をアップさせる
② 現状の粗利益を確保して、投入人時を減らす
③ 更に人時を多くして(粗利益を高める)付加価値業務に投入し、投入人時の伸び以上に粗利益高をアップさせる
という方法が考えられます。
具体的行動としては、
① 作業改善や動作改善、処理能力を高めて、単純作業の人時数を減らす
② 過剰在庫などムダを削減して、その対応のための必要人時を減らす
③ 過剰在庫などムダを削減して、商品ロスを減らして、粗利益を増やす
④ 必要人時の低減分を、付加価値業務にシフトして、粗利益を増やす
などです。
※単純作業(人時)削減と付加価値業務(人時)拡大のイメージ
要するに、
① 1人時当たりの単純作業の処理量をアップさせること
② 1人時当たりの付加価値(粗利益)を意識して、改善行動を取ること
が重要なポイントとなります。
この様なことを戦略的に考えて、日々現場の工夫を行うことにより、全体の人件費は、適切に、そして戦略的にコントロールすることが出来るのです。
時給アップと人件費アップは、決してイコールではありません。
要するに、人時生産性が高いチームは、1人ひとりの時給が高くても、労働分配率を一定に保ちながら、営業利益を拡大することが出来るのです。
逆に、人時生産性が低位な会社は、会社が赤字にならないために、人件費を抑えないと経営が続けられなくなる可能性が高くなるのです。
当然、従業員の時給は、低位にならざるを得なくなります。
このような場合、「人件費率は高い」のに、「従業員の時給は安い」ということになります。
上記の事例のように、時給アップと人件費率低減(維持)を同時に達成することは、十分可能なことなのです。
また、個人の適正(能力)を生かすことが出来れば、生産性は更にアップして、その分時給を上げてやることが十分可能となるのです。
残業の多い会社は、作業のやり方が悪いところがほとんどです。本当に人手不足であることは、少ないように思います。
事実そのほとんどが、人時売上高が低く、当然のように人時生産性も低い状態です。
戦略無し、リーダーシップ不足、スキル不足と言ったところでしょうか。
時給と生産性をあげるには、会社の方針とゴールを明確にして、ルールを共有化する必要が有ります。
そして、チーム内のコミュニケーションを多くして、日々改善活動を繰り返すのです。
会社の方針やルールが明確で無い場合や、コロコロ方針が変わったり、行き当たりばったりの指示を出すようでは、働く側は嫌がります。
ですから、人事制度を策定し、評価基準を明確にする必要が有ります。
ここが曖昧であるために、目指す方向がバラバラで、目標を達成できないでいる企業が多く有ります。
従業員は、「会社が何処を目指すか」ではなく、「何が評価されるか」を考えるのです。
ですから、評価される具体的な中身、そしてその意味(何故か)を従業員に伝える必要が有ります。
人事制度については、今後、『実践的で効果を出す方法』について、お話ししようと思いますが、とりあえず、その一部である『従業員のスキルアップ』のための職務等級について、簡単に解説します。
運用についての解説は、ここでは行いませんが、下の表を見ていただければ、大方の中身は解って頂けると思います。
等級ごとに、「ここまで遣って(成長して)もらいたい」内容を判りやすく、箇条書きで表記します。
従業員1人ひとりのスキルアップが、チーム力アップに繋がり、生産性を高めて、会社の利益拡大に繋がります。
ここを怠けていては、今後益々厳しくなる、であろう地域の競争の中で、苦戦を強いられることとなる確率は、確実に増すことになると思います。
確実に結果を出すためには、具体的な行動計画が必要になります。
以下の『業務改善40項目・セルフチェック表』は、非常に効果的です。
営業利益=粗利益高-経費なのですから、営業利益を拡大するために、「何をするのか?」の『見える化』を行い、社内で共有化を行う為に、非常に効果を発揮します。
自社でそのまま使うのも良いでしょうし、加筆修正を行い、自社版を作ると更に効果的だと思います。
また、各課題に優先順位を付けて、項目を絞り込むことも良いでしょう。
企業ごと、部門ごとに諸事情が違いますので、修正して使うことをお奨めします。そのことで、現状の課題を洗い出すことも出来ると思います。
そして、確実に現場をフォローして、結果に結び付けていくには、目標とゴール(営業利益1%アップなど)を設定して、定期的に実地診断を行う仕組みを作ります。
本部と店長、各チーフなど、関係者の目線を合わせて、確実に現場を確認しながら進めていきます。
以下の表が、そのための参考資料です。
定時定例で、現場のチェックを行い、必要に応じて修正指示や教育訓練を加えて行きます。
商人舎Magazineの私の記事のタイトルは、「お客と社員に支持される生産性向上策」なのですが、まさにこの辺のことを理解していただくことを一つの目的にしています。
経費の中で、ダントツに高い人件費の『投資効率を上げる』ということが、人時生産性を高めることに繋がり、社員一人ひとりの能力を高めて、高い時給をとれる仕組みが出来上がるのです。
世界最大の小売業者であるウォルマートの創業者サム・ウォルトンは、
「人間を今の実力だけで見ている限り、それだけの実力で終わる。
本来出来るはずのレベルまで訓練すれば、本来出来るはずのレベルまで登って行く」
という言葉を残してくれています。
部下に対して、「出来る」「出来ない」の評価をするだけならリーダーは不要です。
高い目標設定をしてあげることが重要なことであり、その為の教育訓練が、リーダーの一番重要で大切な仕事であると思います。
次回は、他の事例を交えて、方向性を少し変えて、問題の解決策を探りたいと思います。
もし、あなたが、
ご相談・お問い合わせは、こちらからどうぞ(勿論、無料です)⇒http://www.summit-rc.com/://
これらの問題は、オペレーションの仕組みが出来ていない中小零細企業とって、大きな課題であると思います。
生産性が低い企業にとっては、今後会社の存続にもかかわってくる問題で有ると思います。
今回は、その対応策について考えてみたいと思います。
実際にあった事例を紹介します。
ある小さなスーパーマーケットを立ち上げるお手伝いをした時のことです。
名も無い。立地も大して良くない。資金も少ない。
そんな中で、パートやアルバイトを募集しなくてはいけない状態でした。
「募集しても、誰も応募してくれないんじゃないか?」という不安もありました。
しかし、結果は、ビックリするぐらい多くの方に応募していただきました。
上手くいった理由は、簡単なことです。
周りより圧倒的に良い条件で募集広告を打ったことです。
先ず高い時給を設定しました。
そして更に、「日曜日は休んでもらって結構です」「たまに土曜日出勤してくれますか」という好条件付きです。
沢山の人が応募して集まってくれましたので、面接会には長い時間を費やしました。嬉しい悲鳴です。
明るくて人当たりが良い人。小さい子供を持った若いお母さんたち。明るくて体力の有りそうな学生さんなど、結果的に、多くの良い人を採用することが出来ました。
戦略と仕組みとオペレーション
人手不足が常態化し、時給も高騰しています。また、最低時給も上がるという中で、企業側はこの先、どの様な行動を取らなければならないのでしょうか。
小手先の対応しか取れなければ、新しい人を募集出来ないどころか、そのうち、今働いてくれている従業員の離職率も上がる可能性が高くなります。その様なことになれば、売場の維持レベルも低下することになります。
企業にとって一番重要な、優秀な財産(人財)を失うことになれば、企業の競争力を低下させ、結果的に売上や営業利益を落とす方向に向かうことになるでしょう。
そうならないためには、コンセプト(進むべき方向)を明確にして、実現のための確かな戦略を立て、その為の仕組みとオペレーションを組み立てることが重要となります。
こう書くと、難しいと考えてしまう方も多いかもしれませんが、決してそうではありません。
ピンチをチャンスに変えれば良いだけです。方法は、幾らでもあります。
「生産性を上げることを、真剣に考えるべき時」が、今来ていると私は思います。
人件費と生産性
働いている方からしたら、時給が高いことは望ましいことです。
でも逆に、経営者側にとっては、人件費が上がるという心配も有るでしょう。
問題は、使う側の『使い方』に有ります。
時給が高くても、それ相応の『仕事量(処理量)』や『仕事の質』を上げてもらえるような仕組み、そのための教育訓練が出来る体制であれば、時給が高いことは全く問題ないことです。
逆に、5年10年と勤務しているベテランのパート社員でも、その職能レベルが高くなければ、時給当たりの生産性が低くなり、相対的に時給は高いものとなります。
上記の事例のケースの場合、
例えば、レジのパート社員は、レジだけではなく、グロサリーの品出しや、定番発注なども交代で熟します。
また、計画的にシフトを組んでいても、天候などの変化によってお店が暇になれば、ルールを決めていて、他の部門の応援や教育訓練に移ります。
グロサリーや日配担当のパート社員は、補充用カートの効果的活用、両手作業など基礎作業の訓練を受けることにより、時間当たりの作業処理スピードが速くなり、それに比例して処理量も多くなります。
また、定番の精度の高い発注は勿論、販売企画の立案や、他の担当者が休みの時の担当外のカテゴリーの発注、そして、レジの応援も行います。
学生のアルバイト社員も同じように、レジ、グロサリーの定番補充など、横断的に作業を熟します。
土曜日や日曜日は、パート社員の休みをカバーするために、早朝から、パンの品出し、日配品の品出しなどを行い、その後レジを担当するという段取りです。 こちらも、レジが暇になれば、他の部門の応援を行います。
このように仕組みを作ることにより、時間当たりの作業処理量は確実に高くなり、質の面でも、時間の経過とともに、大いに高まることになります。
この様に、作業(人時)の無駄が少なくなり、生産効率の指標である人時売上高が高まります。
粗利益率が適正であれば人時生産性を高位に保つことになり、会社もパート社員に対して、高い時給を払える体制になるのです。
上記は中型店の事例ですが、店舗規模が大きくなれば、更に生産性は高くなり、得られる効果は拡大することになります。
時間当たりの付加価値(粗利益)を上げるための考え方を理解する
下の【表・A】は、粗利益高と各経費、そして、営業利益との関係を表した相関図です。
この場合、粗利益高に対する人件費の割合である労働分配率は、人件費が10で、粗利益高が25ですから、
10÷25で、40%と言うことになります。
一方、【表・B】は、人時生産性に対する時給(福利厚生なども含む平均額)を現しています。
この【表・B】を見たことのある人は少ないのではないかと思います。
これは、現場の生産性を考える上で、非常に重要となるフレームワーク(考え方の枠組み)なのです。
【表・B】の場合、店舗の人時生産性が4,000円で、時給の平均が1,600円ですから、
1,600円÷4,000円で、労働分配率は【表・A】の場合と同じく40%となります。
一方【表・C】の場合、時給が1800円と【表・B】の場合より、200円上がっています。
そして、人時生産性も同じく4500円と上がっています。
この場合、労働分配率は、1800円÷4500円で、同じく40%になります。
一方、営業利益(1人時当たり)は、1200円になり、表Aに比べて、1.5倍になっていることがわかります。
更に、【表・D】ですが、
時給は同じですが、人時生産性が4800円と高くなり、営業利益は、1600円で、【表・B】の場合の2倍になっていることがわかります。
あくまでも、人件費以外の固定費が同じであると仮定してのシミュレーションですが、営業利益の拡大を考えるとき、一人時当たりの粗利益高である人時生産性のアップが重要になってくることは理解していただけると思います。
人時生産性を高くするには・・・
人時生産性(粗利益高÷投入人時)を向上させるためには、
① 現状の投入人時で、粗利益をアップさせる
② 現状の粗利益を確保して、投入人時を減らす
③ 更に人時を多くして(粗利益を高める)付加価値業務に投入し、投入人時の伸び以上に粗利益高をアップさせる
という方法が考えられます。
具体的行動としては、
① 作業改善や動作改善、処理能力を高めて、単純作業の人時数を減らす
② 過剰在庫などムダを削減して、その対応のための必要人時を減らす
③ 過剰在庫などムダを削減して、商品ロスを減らして、粗利益を増やす
④ 必要人時の低減分を、付加価値業務にシフトして、粗利益を増やす
などです。
※単純作業(人時)削減と付加価値業務(人時)拡大のイメージ
要するに、
① 1人時当たりの単純作業の処理量をアップさせること
② 1人時当たりの付加価値(粗利益)を意識して、改善行動を取ること
が重要なポイントとなります。
この様なことを戦略的に考えて、日々現場の工夫を行うことにより、全体の人件費は、適切に、そして戦略的にコントロールすることが出来るのです。
時給UP=人件費UPではない!
時給アップと人件費アップは、決してイコールではありません。
要するに、人時生産性が高いチームは、1人ひとりの時給が高くても、労働分配率を一定に保ちながら、営業利益を拡大することが出来るのです。
逆に、人時生産性が低位な会社は、会社が赤字にならないために、人件費を抑えないと経営が続けられなくなる可能性が高くなるのです。
当然、従業員の時給は、低位にならざるを得なくなります。
このような場合、「人件費率は高い」のに、「従業員の時給は安い」ということになります。
上記の事例のように、時給アップと人件費率低減(維持)を同時に達成することは、十分可能なことなのです。
また、個人の適正(能力)を生かすことが出来れば、生産性は更にアップして、その分時給を上げてやることが十分可能となるのです。
個人のスキルアップをはかり、時給と生産性をあげる方法
残業の多い会社は、作業のやり方が悪いところがほとんどです。本当に人手不足であることは、少ないように思います。
事実そのほとんどが、人時売上高が低く、当然のように人時生産性も低い状態です。
戦略無し、リーダーシップ不足、スキル不足と言ったところでしょうか。
時給と生産性をあげるには、会社の方針とゴールを明確にして、ルールを共有化する必要が有ります。
そして、チーム内のコミュニケーションを多くして、日々改善活動を繰り返すのです。
会社の方針やルールが明確で無い場合や、コロコロ方針が変わったり、行き当たりばったりの指示を出すようでは、働く側は嫌がります。
ですから、人事制度を策定し、評価基準を明確にする必要が有ります。
ここが曖昧であるために、目指す方向がバラバラで、目標を達成できないでいる企業が多く有ります。
何が評価されるか」を明確化する!
従業員は、「会社が何処を目指すか」ではなく、「何が評価されるか」を考えるのです。
ですから、評価される具体的な中身、そしてその意味(何故か)を従業員に伝える必要が有ります。
人事制度については、今後、『実践的で効果を出す方法』について、お話ししようと思いますが、とりあえず、その一部である『従業員のスキルアップ』のための職務等級について、簡単に解説します。
運用についての解説は、ここでは行いませんが、下の表を見ていただければ、大方の中身は解って頂けると思います。
等級ごとに、「ここまで遣って(成長して)もらいたい」内容を判りやすく、箇条書きで表記します。
従業員1人ひとりのスキルアップが、チーム力アップに繋がり、生産性を高めて、会社の利益拡大に繋がります。
ここを怠けていては、今後益々厳しくなる、であろう地域の競争の中で、苦戦を強いられることとなる確率は、確実に増すことになると思います。
改善行動のための具体的な手引き書を作る
確実に結果を出すためには、具体的な行動計画が必要になります。
以下の『業務改善40項目・セルフチェック表』は、非常に効果的です。
営業利益=粗利益高-経費なのですから、営業利益を拡大するために、「何をするのか?」の『見える化』を行い、社内で共有化を行う為に、非常に効果を発揮します。
自社でそのまま使うのも良いでしょうし、加筆修正を行い、自社版を作ると更に効果的だと思います。
また、各課題に優先順位を付けて、項目を絞り込むことも良いでしょう。
企業ごと、部門ごとに諸事情が違いますので、修正して使うことをお奨めします。そのことで、現状の課題を洗い出すことも出来ると思います。
そして、確実に現場をフォローして、結果に結び付けていくには、目標とゴール(営業利益1%アップなど)を設定して、定期的に実地診断を行う仕組みを作ります。
本部と店長、各チーフなど、関係者の目線を合わせて、確実に現場を確認しながら進めていきます。
以下の表が、そのための参考資料です。
定時定例で、現場のチェックを行い、必要に応じて修正指示や教育訓練を加えて行きます。
リーダーシップが答えを変える
商人舎Magazineの私の記事のタイトルは、「お客と社員に支持される生産性向上策」なのですが、まさにこの辺のことを理解していただくことを一つの目的にしています。
経費の中で、ダントツに高い人件費の『投資効率を上げる』ということが、人時生産性を高めることに繋がり、社員一人ひとりの能力を高めて、高い時給をとれる仕組みが出来上がるのです。
世界最大の小売業者であるウォルマートの創業者サム・ウォルトンは、
「人間を今の実力だけで見ている限り、それだけの実力で終わる。
本来出来るはずのレベルまで訓練すれば、本来出来るはずのレベルまで登って行く」
という言葉を残してくれています。
部下に対して、「出来る」「出来ない」の評価をするだけならリーダーは不要です。
高い目標設定をしてあげることが重要なことであり、その為の教育訓練が、リーダーの一番重要で大切な仕事であると思います。
次回は、他の事例を交えて、方向性を少し変えて、問題の解決策を探りたいと思います。